顧客の購買要因(顧客による購買につながる要因)を満たすことで、顧客との成約を獲得することができる。さらに複数の購買要因のうち、顧客の店内経験に関わる購買要因の充実度が、成果に影響する。そこで本稿では、窓販商品の購買要因を概観し、購買要因の一部に貢献する顧客の店内経験について考える。
1. 窓販商品の購買要因となる5P
はじめに窓販商品の購買要因を考える上で、5P(4P+Personality)について確認する。【図1】4PとはProduct(商品など)、Price(価格)、Place(流通経路)、Promotion(広告・PR・販促など)であり、マーケティングの4Pと呼ばれている。この4Pに加えて、5つ目の購買要因としてPersonality(パーナリティ)を追加して設定する。
【図1】窓販商品の購買要因となる5P
例えば新車を購入する際に、「あのクルマを買いたい」と思わせる購買要因が4Pであるとすれば、「あの営業担当者から買いたい」と思わせる購買要因がPersonalityであると考えられる。一般に人的販売(personal selling)はPromotionの一部として位置づけられるが、スタッフのサービスマインドや専門性がカギとなる商品においては、もう少し広がりと深みを持った概念で購買要因を捉える必要度が増しているように思われる。それではこの前提を踏まえて、購買要因の5Pの中身を観察する。
◆顧客からみたProduct(商品など)
Productの優位性を考える上で、商品ラインナップの充実度は?というテーマがよく聞かれる。ところで商品ラインナップが充実している状態とは、どういった状態をさすのであろうか?「自行庫の取扱商品数が競争相手に比べて多い状態」であろうか?もう少し顧客視点で掘り下げると「顧客からみて、商品の選択軸とそれに対応する選択肢が必要十分である状態」という見方ができそうである。つまり同じ商品ラインナップであっても、顧客セグメントによって、その見え方が違うことに注意を払う必要がある。
極端な例を挙げると、投資習熟度が低く元本保証の有無を最も重視する顧客セグメントAと、投資習熟度が高く一定のリスク許容を前提とした収益性の高いポートフォリオを最も重視する顧客セグメントBに、同じ取扱商品ラインナップが掲載されたパンフレットを渡したとき、その反応は異なる可能性が高いということである。
Productに関わる購買要因は、商品選択軸と選択肢が肝要だが、そのこと以外にもネーミングや商品設計上の親しみやすさ、個々の商品のリスク&リターン勘案度などを合わせた総合力が求められるように思われる。
◆顧客からみたPrice(価格)
ターゲット顧客からみて、自行庫の申込手数料や信託報酬などの価格が競争相手に比べて優位な状態を保つことに加え、その価格が自行庫の持続的な利益に貢献することが価格設定の目的となる。しかし値下げは利益低下要因となりやすいため、現実的には、顧客セグメント・対象品目・適用期間などを選んで、全体の収益のバランスを見ながら効果的な価格設定を行っていくこととなる。
加えて価格は「価格表示」という側面も持ち合わせている。例えば手数料0%の品目であれば、手数料0円と表示したほうが顧客にとっては分かりやすく、0円よりも大きく太字で0円と表示すれば、よりインパクトが生まれやすい。
◆顧客からみた Place(流通経路)
ターゲット顧客からみたPlaceによる購買要因としては、立地の魅力・時間の柔軟性・店内環境の3つが挙げられる。
「立地の魅力」という点では、ターゲット顧客の自宅や通勤経路などを勘案した立地利便性がある。さらに概念を広げると、買物やレジャーといった別目的ついでに立寄れる「ついで」利便性を勘案した店舗立地が有効に働きそうである。次に「時間の柔軟性」については、営業時間の延長をはじめとして、待ち時間の緩和や予約の自由度(予約時間帯の幅、予約方法の簡便性など)といった要素が挙げられる。最後に「店内環境」という点では、エントランス・待合スペース・相談スペースの快適さや機能性などが挙げられる。
◆顧客からみたPromotion(広告・PR・販促など)
ターゲット顧客からみたPromotionによる購買要因としては、企業や商品に対するイメージ・口コミ情報・インセンティブの3つが挙げられる。
「企業や商品に対するイメージ」は、広告だけで醸成されるものではなく、投資信託・保険・資産運用に関わる報道や記事によって醸成される。また自行庫が運営するHPや各種セミナーによってもイメージは醸成できる。次に口コミ情報である。家族・友人による評価、地域・近隣での評判、信頼する第三者の評価など口コミはITの普及により、ますます多様化している。最後の「インセンティブ」は一般にキャンペーンといわれる類のものである。
◆顧客からみたPersonality(パーソナリティ)
ターゲット顧客からみたPersonalityによる購買要因としては、人間愛・情報と知識の確かさ・カウンセリング力の3つが挙げられる。
「人間愛」は、マナーとおもてなし・ウソのない誠実さ・顧客への親身さといった要素から成る。「情報と知識の確かさ」は、商品や金融に関する知識や最新情報、関連資格などを指す。「カウンセリング力」は、顧客本位の情報提供態度や効果的な質問力、顧客ニーズの理解力、商品の目利き力などから構成されている。
一般にEQ(人間愛)とIQ(情報と知識の確かさ)のバランスが大切であるといわれるが、究極のカウンセリングとはEQとIQが高い次元で融合したときに達成されるようである。顧客セグメントによって、EQとIQを重視する度合は異なるが、顧客のためを思い、信頼できる情報・知識に基づいた効果的なカウンセリングが成されれば、顧客ロイヤリティが醸成され、収益が持続するものと考えられる。
2. 成果に影響する顧客の店内経験
さて、窓販商品の購買要因の5Pについて見てきたが、Placeの店内環境ならびにPersonalityの全てに関わる要因だけをみても、収益に20から30%の差異が生じるケースが報告されている。【図2】
【図2】成果に影響する顧客の店内経験

このことは顧客の店内経験の違いが成果に影響することを意味する。そこで顧客の店内経験が購買要因とどのように相関しているかを具体的に把握する必要が生じる。
【図3】を見ると、顧客の入店から退店に至るまでの経験プロセスが示され、各々のプロセスに呼応するCE(顧客の期待度)/ CS(顧客の満足度)項目が記されている。さらにCE/CSの項目が、どの購買要因と相関しているかを表している。つまりCE/CS項目に関わる顧客の店内経験をマネジメントすることで、最終的には購買要因を効果的に刺激することが可能となる。
【図3】店内経験と購買要因の相関

例えば、ターゲット顧客が複数ある購買要因のなかでも、「カウンセリング力」を重視し、とりわけ「質問内容の適切さ」に期待していたのに、必ずしも十分な満足に至っていないという調査結果が出たとする。その場合は、質問した内容を顧客タイプ別にレビューし、分析を重ねた上で、質問内容に潜む満足/不満足の要因を発見し、解決策を立案し、実行・モニタリングを行うことになる。
今後、窓販マーケティングを考える上で、こうした店内経験のマネジメントの差異が、重要なカギとなるのかもしれない。
◎執筆:ジェイコンサルティング代表 桑畑 穣太郎【月刊金融ジャーナル 2006年11月号掲載】


