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生涯顧客を生み出す3つのおもてなし【月刊ストアジャーナル 2003年5月号掲載】


◎「生涯顧客」はほかのお客様とどう違う?

私には、家族がいる。私には、親友や仲間がいる。そして私には〇〇がある・・・。あなたのお店のことを「私には〇〇がある」と心からいえるお客様。そのお客様こそが、あなたの「生涯顧客」です。

では、「生涯顧客」とほかのお客様とではどこに違いがあるのでしょうか。思いをめぐらせてみてください。次の3つのことが、ほかのお客様と大きく違うはずです。

・あなたのお店や商品に愛着を持っている
・あなたのお店のことを周りの人に薦めてくれている
・あなたのお店で継続して購入してくれている

そして何より違うのは、そのお客様が「お店をやっていて良かった。」と思わせてくれる存在であるということでしょう。

「生涯顧客」を生み出すためには、その違いを知ることから始まります。まずは、自店のお客様を次のように分類してみてください。

<1>新規客(トライアル客)
あなたのお店にはじめて来店・購入したお客様(2回目も含む)

<2> リピーター
あなたのお店に3回以上来店・購入したお客様

<3>固定客
あなたのお店を頻繁に訪れ購入し、競合店で購入しなくなったお客様

<4>生涯顧客
あなたのお店なしでは生きていけないお客様

一般的に、生涯顧客に至るまでには「新規客→リピーター→固定客→生涯顧客」というステップを踏みます。ただし、この4つの顧客階層に分類するにあたっては、???は「お店での購入頻度・購入結果」のみを基準にしたもの、そして?は、購入頻度と購入結果に加え、「お店への思い入れ」が強いということにお気づきでしょう。

つまり、いくら購入頻度と購入結果が高い?の場合でも、お店に対する愛着が薄ければ、競合店が低価格を打ち出したり品揃えを充実させたとき、そちらへ流出する可能性があるということです。あなたのお店の魅力が、価格と品揃えにしかないと、そうなってしまいかねません。したがって、生涯顧客を生み出すためには、購入頻度や購入結果だけでは図れない「お客様との関係作り」を強く意識する必要があるのです。


◎生涯顧客を生み出す3つのおもてなし

では、どうすれば生涯顧客を生み出すことができるのでしょうか。その答えは、「商いの原点に基づいたそのお店にしかできないおもてなし」をすることによって、徐々にお客様との関係を深めていくことです。

もちろん、<1>の新規客であっても、ほかでは味わえない感動をお店で体験させられれば、一気に生涯顧客になる場合もありますが、その可能性は極めて低いでしょう。たった一度の来店や購入だけで生涯顧客を作ることができれば、誰も苦労はしません。生涯顧客を作り出すためには、お客様と何度も接触し、根気強く信頼関係を築いていかなければならないのです。

とは言え、この「おもてなし」はそれほど難しいものでも、コストが掛かるわけでもありません。しかしこのことは、どのお店でもわかっているようで、じつは見逃していることが多いのです。

そこで、生涯顧客を生み出すための具体的な「おもてなし」について見ていくことにします。


1.ほかにはない「コミュニケーション」のおもてなし

<1>お客様の目を見て心のこもった挨拶をする

ごく簡単で当たり前のことですが、忙しいからと言って、目も合わせずに挨拶をしていることはありませんか?また、マニュアル化された「乾いた挨拶」になってはいないでしょうか?

熱烈なファンが多いザ・リッツカールトン・ホテル大阪。このホテルのルームメイドの1番の仕事はお客様へのご挨拶をすることです。客室階で掃除をしている最中でも、いったん手を止めお客様の目を見て、「おはようございます」「行ってらっしゃいませ」「ありがとうございました」と、心のこもった挨拶をします。その挨拶の後、ルームメイドは、通常の仕事に戻るのです。

「お客様を大切にしているお店かどうか」それは、挨拶の瞬間で決まるということを再確認してください。


<2>お客様のシグナルに気を配る

お客様はお店に入ると、「お店の雰囲気」や「商品」と無言の会話をしているものです。店側はその間、お客様が何を考えているのかをさりげなく推察しなければいけません(その時、お客様の視線に入りすぎないこと)。何か興味を持てば、お客様は必ずシグナルを送ってきます。そのシグナルは、言葉だったり、誰かを探すしぐさかもしれません。

そんなとき、スタッフが勝手に近付いて話をスタートさせてしまったとしたらどうでしょうか。お客様は、必要なときにだけ話がしたいものです。お客様の微妙なシグナルを理解し、タイミング良く応対する。それが居心地の良いお店であり、生涯顧客を生み出す第1歩なのです。


<3>お客様のことを記憶にとどめる

何度かお見えになったお客様は、店側以上に、お店やスタッフのことを記憶にとどめるようになっています。そうしたお客様に、「先日はありがとうございました」「前回お買上げいただいた〇〇はいかがでしたか?」など、前回ご来店いただいたお礼や商品の使用実感をお伺いすることができているでしょうか。

こうしたひと言が、コミュニケーションを始めるキッカケになるのは言うまでもありません。と同時に、お客様は「自分のことを覚えていてくれた」「気に掛けてくれている」と感じ、お店に対する愛着が深まってくるものです。

意外にも多いのが、前回ご来店したお客様の顔やお客様とのやりとりを忘れているケース。お客様をよく観察し、できるだけ記憶にとどめておこうとする気持ちをなくしたお店は、生涯顧客を生み出すどころか、衰退の一途をたどるのは目に見えています。

たとえば美容室など、事前予約でお客様がお見えになることがわかっているのであれば、スタッフ全員でお客様の情報を共有化し、あたたかくお出迎えする心の準備をすべきでしょう。前述のザ・リッツカールトン・ホテル大阪でも毎日、予約のお客様についてそれを実践しています。

しかし、前回のやり取りを覚えているからといって、やみくもにお客様の個人的な趣味や家族構成などを聞くものではありません。まずは、商品の使用実感などに対し、的確なアドバイスができる存在になって、お客様との信頼関係を作ることが先です。

そうすれば、いずれお客様のほうから個人的な生活習慣や趣味などの話が出てくるようになります。そこで初めて、スタッフは共感できる話題として真剣に耳を傾けるようにしてください。すると、自然とお互いの関係は深まってくるのです。


2.ほかにはない「行動」のおもてなし

<1>細やかな「動き遣い」

「心遣い」とよく言われますが、これを行動にするのが「動き遣い」です。たとえば、雨降りの日にお客様がわざわざ来店してくださいました。そこで、濡れた傘をビニールに入れて差し上げたり、お客様をお見送りする際に濡れないよう傘をお差しする、といったことができるでしょうか。

業種を問わず、どんなお店でも実践できることですが、実際のところ、このようなお店はあまり見かけません。お客様は、こうしたちょっとした「動き遣い」に感動さえ覚えることもあるのです。


<2>プロらしい姿や動きで、お客様を魅了する

引っ越しスタッフが重い荷物を運ぶ手際の良さ、大きいナイフでたくましく、しかも繊細にパンを切るパン屋さん、花を愛でるように細やかに手入れする花屋さん・・・など。お客様は、スタッフの姿や動きをよく見ています。懸命に働く姿、
プロらしい動きに、お客様はスタッフはもとより、お店にも魅力を感じるものです。

「あのお店のスタッフの〇〇な動きは凄い!さすが△△屋さんだけあるね」。こう言われるくらいに、技を磨き、お客様を魅了するための努力をしてください。


3.ほかにはない「商品」のおもてなし

<1>商品と品揃えの魅力を保つ

どんなにコミュニケーションや行動のおもてなしができていても、商品自体に魅力がなければ、お客様との関係が長続きしないのは言うまでもありません。お店での付き合いと、家族や友達と決定的に違うのが、「商品を縁にした人間関係である」ということです。

あなたはなぜお店をはじめたのでしょうか?それは、お客様に「あなたしかできないおもてなし」ができると思ったからではないのでしょうか。お店にとって、商品や品揃えは、それ自体が「おもてなしの結晶」です。商品の見せ方や、お客様を飽きさせない品揃えなど、商品を輝かせる工夫を常に心掛けるようにしましょう。


<2>商品の価値を愉しむ知識やノウハウを提供する

お客様は、なぜ商品を買うのでしょうか?それは、商品の価値を最高に楽しみたいからです。だったらお店はその楽しみを知るプロとして、ノウハウを提供すればいいのです。

たとえば、「バックの原皮は、ナラの木の樹皮が入った水槽に6ヶ月間浸してなめしたものです。こうして耐腐性をもつ革が生まれるんですよ」など。こうした具体的な知識は、お客様の興味を引くだけでなく、購入に至るまでの過程を楽しんでいただくことにもなります。ただし、お客様のシグナルに気を配り、強引なアドバイスにならないよう気を付けてください。


<3>商品でおもてなしする

いつも行列をなす東京・西麻布にあるとんかつ店「三河屋」のおばちゃんは、とんかつ定食を頼んだ私に「コロッケ好き?じゃあおまけに付けておくね」と、揚げ立てのコロッケをお皿の上に乗せてくれます。たったひと言、でも心に染みる言葉が付いたコロッケは、とんかつに匹敵するほど美味しく感じられるのです。

商品は、売るためだけにあるのではありません。いつもより余計に商品を差し上げる、あるいは新たな商品を試していただくなど、商品でおもてなしをすることもできます。

しかし、たいして欲しくもないモノを、店側が「おまけ」として手当たり次第に渡すのは、お客様が迷惑に感じることがあります。また、「自由に取ってください」とか「ばら撒くように配る」という姿勢では、お客様の印象には残りません。

「おまけ」は、お客様の好みに合ったモノであること、さらに忘れてはならないのは、必ずひと言を添えてお渡しすること。これが商品でおもてなしをするということなのです。


◎執筆:ジェイコンサルティング代表 桑畑 穣太郎【月刊ストアジャーナル2003年5月号掲載】


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